「ねぇ、ちゃん。リップ持ってない?」


「へ?リップ?持ってるけど…」


「マジマジ!?あ、でもそれメンソール入ってる?」


「えーと、うん!入ってるよ。でも…ジローが使うの?」



テニス部マネージャー、は、部員、芥川慈郎に不信感を抱きます。


だって、だって、普通女子からリップ借りるなんてありえない!!(男子でもちょっとヤバいけど…)


恋人でもないのに!ただの部員とマネージャーの関係なのに!


リップって軽く間接キスじゃん!



「ジローが使うんだったら、貸さないよ?」


「えー!?何で、何でっ!?」


「え…だ、だってさあ…」


ホント、デリカシーないやつ。ジローって。



「あ、もしかして、間接チュー…?」


ホント、救いようのない、ね。



「だって、そうじゃん…、あたしジローとはただの友達でしょ…」



あたしがジローを見る目は、「好きな人」たけど。



「えへへ、違うよー。だって、ちゃん。俺のこと好きでしょ?」



…自惚れてるよ、ジローのやつ。


でも、その通りなのがむかつく!!



「…だけど。」


「え、なになに?聞こえないよー」


「そうだけどっ、悪いっ!?」



「ううん、悪くないよぉ。これで俺たち、ただの友達じゃなくて、恋人同士♪」



「へっ?」



「えー、だって、俺もちゃんのこと好きだCー、ちゃんも俺のこと好きだからー、両思い。ってことで恋人同士だCー♪」



「う、嘘…。」



「ホント。あ、話反れちゃったけど、ちゃん。リップ貸して?」


話反れちゃったけど、じゃない!!


反れちゃって別の意味でびっくりなんだけど!!


ってか、何でそんなのん気なのよ、ジローは!!



「大丈夫、それ、口には使わないから!」


…は?


口じゃなかったらどこに使うの…?



「眠いからー、目のまわりにリップ塗ろうと思ったんだCー。メンソールってスースーして気持ちEーって聞いたから目が覚めるか「覚めないよっ!!」


ホントにジローの頭ってどんな構造しちゃってるの!?




「もー、そんなに怒鳴らなくても、Eーじゃん!」


「だって、ジローがおバカなこと言うから…。あ、もちろん貸さないからね、リップ。」



「えー、何でー!?ちゃんと恋人同士になれてー、後はリップを貸してもらうだけなのに!!」


そうだけど、それとは違うっ!!


「ダメだよっ、ぜーったい貸さないっ!!」


「そんな、ちゃん!!」





救いようのないジローとその彼女のあたしの普通すぎる、日常。



メンソールで救って
(もしかして、あたしたちって……バカップル?)








貸さないよってあ、ジロー、リップとらないで!!(09.02.07 / title:cathy)