もう、終わった恋だけど。


まだあたしは忘れられなくて。
























、今からバイト?」




高校を卒業し、バイトばっかりしていたある日のこと。




高校からの友達だっだ夕輝から電話がかかってきた。







「うん、そうだけど。」



「ほんとー?じゃあ、ごめんね、邪魔して。」



「ううん、じゃあねー。」







どうせ夕輝のことだから買い物に付き合え、とかそんなことだろう。




あたしは気にせず、バイト先の喫茶店へと向かう。




それにあたしのバイトは週4日。高校を卒業してからはほとんど入るシフト。



友達と遊んでいる暇なんてない。



















「おはようこざいまーす。」




ペコリとマスターに挨拶してから、あたしは仕事の持ち場へとつく。





「ああ、そうだ、。今日から新しい人入るみたいだよ?」




キッチンからひょっこりと顔を出した親友のがあたしに言う。





「わっ、!いたの?」




は朝に弱いし、あたしはいっつもマスターの次に早いからてっきりあたしとマスターのふたりきりかと思っていた。






「あ、ひどい。まあ、よりあたし、朝に弱いけどさー。」






が膨れっ面でこっちを見る。






「あはは、ごめんってば。」






「ま、いっか。でさ、夕輝から遊ぼうって連絡あった?」




「ああ、うん。あったよ。」






「やっぱり。夕輝のやつ、彼氏にフられたらしいよ。



どうやら、昔の女が忘れられないとか何かで。



それで今、暇してるんだって。」







「へ、へー…。」






「まあ、元から夕輝がそれでもいいから付き合ってって


言って付き合ってたらしいんだけどさ。」







あたしは夕輝の彼氏の気持ちが痛いほど分かる。




何故なら、あたしも彼と同じだから。





未だ、昔の男に恋してる。





切なくて、絶対に叶うことのない、恋。





















それから、しばらくして






カラランと、ドアを開ける音が聞こえた。




まだお店は準備中だから、恐らくスタッフだろう。








「おはようこざいますっ。今日からここで働かせてもらう、切原赤也ッス!よろしくお願いします。」












――まさか新しい人、それがアイツだったなんて。





あたしは夢にも見てなかった。
























「あ、。見て!カッコよくない!?」




があたしに耳打ちする。




「あ、う、うん……」






「あ、はじめまして。切原赤也ッス。よろしくお願いします。」





切原赤也、そう名乗った男は軽くあたしたちに会釈をすると、マスターのいるキッチンのもとへ向かった。





よかった、気づかれなくて。




でも、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、寂しさが胸を過ぎる。











そう、切原赤也――









あたしの、忘れられない、元彼。












ちゃん、ちゃん、今日からここで働く、切原くんだ。よろしく頼むよ。」





「ああ、赤也くん、彼女たちはちゃんとちゃん。君は彼女たちと同じシフトだから仲良くしてくれ。」






大丈夫。名前だけならバレない、




…はずだった。












「――、せん、ぱい………?」










「あ…かや……」












ああ、何てこと。




彼はあたしの顔は忘れていても、名前だけは覚えていたみたい。




出来れば、このまま、このまま気付かないでいてほしかった。





だって、あなたとの思い出は儚く、寂しく、苦い思い出ばかりだから。










でも、もう手遅れだ。








再びギシギシと音をたてて、あの頃のまま止まっていた



あたしの運命という歯車がまわり始める。





この、切原赤也という男の手によって。









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連載開始です!
無事、完結できるように頑張りたいです!
儚く、切ない気持ちを伝えられたらなと思います^^

09.2.24