恋を唄う。♯02 言葉も声も引っ込み思案で
――あたしってホント恋には縁がないみたい。
今は教室でランチタイム。
つい何時間か前ほど、あたしが片思いしていたのは学校のイケメントップ3に入る丸井ブン太くんだと発覚いたしまして。
それにその丸井くんとあたしの弟の赤也はすごく仲がいいらしくて。
ああ、もう!
何であたしってこんなにすべてが平凡なの!?
あ、まあ…運動は結構できるほうだけど勉強はダメ。
特に英語がヤバい。赤也も英語が苦手だからきっと遺伝なんだよ!遺伝!
「ー?何ボーっとしてるの?」
「あ、。」
クルクルの睫毛、茶色の瞳、長くて軽く巻いてある髪。
このすべてを持ち合わせた容姿を持つのが、あたしの親友、。
男子からも女子からも人気があって、何であたしなんかと親友なんだろって思っちゃうくらい美人さん。
「……、聞いてくれる?」
「うん、いいよ。なあに?」
「あのね…―――」
あたしはにすべてを話した。
「ふうーん、の好きな人って丸井くんだったんだ!」
「う、うん……。そうだったみたい。」
「ていうか、。丸井くん見たことなかったんだね。」
「はい…。だって人の顔覚えるの苦手なんだもん…!」
「でもさ、赤也くんのおかげでの存在を丸井くんに知ってもらえたじゃん?」
「あ、そっか。」
「それに赤也くんの話題で丸井くんに話しかけることだってできるし。
例えば、赤也って部活ではどんな感じー?とかさ!」
さすが、。
はあたしが悩んでいるときにいっつも的確なアドバイスをくれるんだよね。
でも、自分から話しかけるのには勇気いるかも……。
それからと他愛のない話をしていたら先生が来てあたしは席に着いた。
「えー、今日は転校生を紹介する。ゴホン、川上。入って来なさい。」
こんな時期に転校生ねえ……めずらしい。
ガラッとドアが開いて入ってきたのは、何とすっごく美人でスタイルのいい女の子。
女の子のあたしでも一瞬、瞳を奪われちゃった。
もちろん、クラスの男子なんかは幸村くんを覗いて全員目がハートになっている。
でもこんな美人を見ても冷静でいられる幸村くんって凄いなあ。
なんか、丸井くんとは違ったカッコよさが彼にはある。
「川上愛です。B組の丸井くんとは幼馴染みです。よろしくお願いします!」
あたしの妄想を突如かき消したのは、あの女の子の声。
それより、何だって!?
この美人さんが丸井くんと幼馴染み!?
丸井くんってこんなに美人さんな幼馴染みがいたんだ…。
うん。あたしって勝ち目なくない…?
大体さ、自己紹介に何で丸井くんと幼馴染みってのがいるのよ?
丸井くんはあたしのものだからとらないで発言。
もうこの、川上さんだっけ?
一体、何なのよ!?
HRが終わって廊下に出ると丸井くんと川上さんが親しげに話していた。
ああ、川上さん。いいなあ…。
2人が一緒にいると絵になるくらい、2人とも美形。
やっぱり、丸井くんと釣り合うのは川上さんみたいな美人で綺麗な子だけなのかな…?
ふいに目頭が熱くなったと同時に丸井くんと川上さんの前を通り過ぎた。
その瞬間、
「あれ?ちゃん?」
何でか分かんないけど丸井くんに手を引っ張られた。
「あ、やっぱちゃんじゃん。俺って天才的ぃ♪」
「…ま、丸井くん。」
あたし恥ずかしくて声が出ない。
やっと出たと思ったらこんなに小さい声。
だって、あの丸井くんとお話(?)してるんだよ…!?
でも、これって赤也のおかげだよね。
ありがとう、赤也。
「って、あ!悪ぃ、いきなり手掴んじまって。」
慌てて手を離す丸井くん。
別にこのままでよかったのに…。
「ううん、いいよ。それより、あたしに何か用?」
「あ〜、別に用って訳じゃねぇんだけど。何となく、ちゃんだ!って思って。」
「あはは、おもしろいね。丸井くん。」
「ブン太ぁ〜、今、あたしと話してたじゃん!」
ぐ!川上さんがあたしをものすごく睨んでいる。
川上さんって、もしかして、もしかしなくても性格…かなり悪かったりする?
あ、そっか。美人は性格悪いってよくいうもんね!
あたしでも友達が違う人と話してたら邪魔しないのに!
「もう、いいや。行こ、ブン太。じゃあね、えっと…さん。」
「は!?ちょ、愛……」
丸井くんが川上さんにズルズルと引きずられていく。
あたしも丸井くんも唖然。
あたし、この川上さんがいる限り、丸井くんと学校ではお話できないかもしい。
川上さん。できれば、転校してきてほしくなかったなあ……。
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09.3.30